『夫婦の老後貯蓄の平均値と中央値』について見ていきましょう。
年金の支払いが不安視され、景気もなかなか上向かない昨今、将来に備えて貯蓄しておくことは非常に大切です。
しかし、『幾らぐらいを目標に貯めてる?』なんて話は仲間内でもし辛いですよね。
かといって自分の判断だけで貯蓄額を設定するのは難しくあります。
そこで、ここでは今の60代(夫婦世帯)が幾らぐらい貯蓄しているのか、その平均値と中央値を確認して参考にしてみましょう。
また、老後に必要なお金って実際は幾らぐらいなのか?についても少しだけ触れたいと思います。
老後貯蓄ってなぜ必要?
1.年金が信頼できない
俗に世代間扶養とも呼ばれる年金は『働く世代が老後世代を支えるための制度』です。
その仕組みは、
- 働く世代から保険料を徴収する
- 徴収した金銭と税金を足して受給者たちに給付する
ようになっています。
ちなみにサラリーマンであれば給料から天引されるので、
なんて経験があるのではないでしょうか?
年金はその仕組み上、働く世代が一定以上いなければなりません。
ところが近年の少子高齢化から、年金保険料を支払う世代が減っていっています。
しかも年金を受け取る世代は増えていくわけですから、必然、
- 保険料を上げる
- 給付金額を下げる
のどちらかになります。
しかし、冒頭でも書いたように、経済状況も微妙なところですから、保険料を上げることは(なかなか)出来ません。
とくれば、年金支給額は減っていくことになり、『年金は信頼できない』ということになってしまいます。
信頼できないの意味
ただし、年金制度も徐々に手入れされています。
保険料を徴収する層を広げたり、滞納のないように工夫したり・・・
よく『年金は全く払われなくなる』と言われていますが、これはまずないでしょう。
年金が信頼できないというのは『払われなくなる』という意味ではなく、払われる金額が少なくなるだろう、という意味です。
より噛み砕いて言えば、『年金だけをあてにして生活することは不可能(になる)だろう』=『年金に加えて貯蓄が必要だ』ということですね。
また企業年金や確定拠出年金に加入している人であれば、この限り(年金は信頼できない)ではありません。
2.医療費&介護費の負担
科学の進歩は偉大なもので、近年、人間はちょっとやそっとの病気では参らなくなりました。
人生100年の時代です。
ところがそれも良いことばかりではなく・・・
- 年を取ると、どうしても体力が衰える
- 衰えると病気がちになる
ので、医療費が増えます。
また先進的な化学医療はそもそもの費用が高く、癌の治療には平気で何百~何千万が請求されます。
もちろん保険や高額医療費制度を使えば、そっくりそのまま負担せねばならない、ということはありませんが、それでも不意の出費に備える必要を否定することはできません。
更に『介護費用』ですね。
加齢や病気の結果、いわゆる『寝たきり』になってしまったとき、その介護費用は馬鹿になりません。
介護士を雇ったり老人ホームに入ったりするのには、月あたり8万円掛かる、と言われています。
これが払えないと『老老介護』、年老いたパートナーや親を同じように年老いたパートナーや子が介護することになります。
医療費、介護費は年金だけで賄うのは難しいので、
になるわけです。
3.教育費
子供の年齢にも依りますが、子供の大学進学が老後だ、となれば・・・
たとえば私立大学生は年間180~200万円を必要とする、とされていますし、学部によってはこれ以上も有り得ます。
4年間で1000万円、大学進学する子供が2人であれば2000万円ですね。
奨学金という選択肢もありますが、奨学金だけでは学費を払いきれない場合もありますし、物によっては審査が厳しい、金利が高い、などの問題もあります。
老後貯蓄の平均&中央値
平均値と中央値?
ご存知『平均値』は平均を出したい数字を全て足して割ったもの、です。
その性質上、『貯蓄額の平均値』を出そうとすると、貯蓄額の極端に多いor少ない世帯によって値が引き上げ(下げ)られます。
100人の人が居るとして、90人の年収が200万円だとします。残る10人の年収が、もし5000万円だとすれば、平均値は幾らになるでしょうか?
680万円です
平均値では、こういう現実との乖離がしばしば起きます
これに対して『中央値』は数値を出したい数字をずらー、っと並べて、文字通りその『中央の値』を求めます。
1から10までの数字を並べたとき、その中央値は5です
もし11を追加しても殆ど変わりません
で、『貯蓄の平均額』には前述したような問題がまさしく含まれます。
よって、『普通の人の貯蓄額』を知りたいときは『中央値』を参照した方が良いことになります。
貯蓄額の平均
60代の貯蓄額、その全体の平均は2200万円とされています。
ちなみに単身世帯だと2600万円にまで増加します。
なお貯蓄額は年収によっても左右され、それは次のような表に纏められます。
年収 | 平均値 |
収入なし | 1022万円 |
300万円未満 | 1005万円 |
300~500万円未満 | 1346万円 |
500~750万円未満 | 1635万円 |
750~1,000万円未満 | 2478万円 |
1,000~1,200万円未満 | 3600万円 |
1,200万円以上 | 4299万円 |
貯蓄額の中央値
60代の貯蓄額、その全体の中央値は1500万円になります。
ちなみに単身世帯だと1300万円になります。
この中央値も年収によって左右され、その内容は次のように纏められます。
年収 | 中央値 |
収入なし | 0万円 |
300万円未満 | 300万円 |
300~500万円未満 | 800万円 |
500~750万円未満 | 1080万円 |
750~1,000万円未満 | 1700万円 |
1,000~1,200万円未満 | 3150万円 |
1,200万円以上 | 3213万円 |
ただし・・・
この中央値には『貯蓄が0の人』は含まれていません
貯蓄がない人を含めると、この中央値もグッと下がります
貯蓄0の世帯
60代で『貯蓄0』、つまり一切ない、という家庭は次の通りだとされています。
年収 | 貯蓄なし |
収入なし | 60.00% |
300万円未満 | 37.80% |
300~500万円未満 | 25.70% |
500~750万円未満 | 18.10% |
750~1,000万円未満 | 8.50% |
1,000~1,200万円未満 | 16.70% |
1,200万円以上 | 15.40% |
老後に必要なお金って?
老後に必要なお金は、では現実には幾らなのでしょうか?
次の仮定に則って計算してみます。
- 夫婦は現在65歳
- 95歳まで生きるとする
- 家は持ち家、その家で生活する
- 年金だけでは生活費が足りず、月5万4700円の不足が出る(※)
※高齢夫婦無職世帯の家計収支(平成28年の家計調査年報)より
さて、30年間の生活費の不足分は、
- 54700×12×30=1962万円
となります。
60代時点で750万円の年収がある人の貯蓄中央値を、既に上回っていますね。
無論、これは病気もせず、介護もせず、家のリフォームもされなかった場合の金額です。
実際には夫婦のどちらかが病気になるかもしれませんし、65歳の段階で住んでいる家が95歳まで持つかは微妙です。
リフォーム代だけでも200~300万円、間を取って250万円としたものを1960万円に足せば2150万円ですね。
更に葬儀代100万円ほどを追加すれば2200万円、ここに入院費や介護費を足すと・・・
少なくとも、貯蓄が一般的な中央値ぐらい=2000万円ぐらいの家庭ではお金が足りなくなるようです。
老後に必要なお金は今後ますます増えていく?
1月に5万4700円の不足が出る・・・というのは、あくまでも現状の話です。
今後、年金の支払額が引き下げになれば、この不足分は上がっていきます。
むろん、そのときの物価や景気によっても左右されますが、老後に必要なお金はますます増えていくことになると予想されます。
【老後貯蓄額の平均値と中央値】まとめ&お金を貯めるために
今回は『夫婦の老後貯蓄の平均値と中央値』を見てきました。
記事内容をずばり纏めると、
- 平均は2200万円
- 中央値は1600万円
- ただし収入によっても差がある(上二つは全体の平均と中央)
- 老後に掛かるお金は少なくとも2000万円程度
- 多くの家庭ではお金が足りないかも?
ということになります。
基本的に、お金は取るごとに貯め辛くなります。
大事なことは早いウチからコツコツ貯めること、目安は手取りの2割、出来るならば3割です。
毎月コツコツ貯めるには、給与を受け取った時点で貯金口座に一定額を移す『先取り貯金』の癖をつけることです。
加えて、可能な限り正確な家計簿を作り、『無駄』を省いて行ければ良いでしょう。
2000万円というと超大金ですが、20代、30代のウチからコツコツやっていけば、意外と貯まるものです。
かといって節約しすぎれば今度はストレスが貯まるので、『出来るだけ』を無理なく続けて行きましょう。